ステークホルダー

石澤直也自然誌vol.54 (2016年12月09日更新)

くぬぎ山の自然 2016年12月号

 

くぬぎ山の外来種の生き物

2003-2004年にかけてくぬぎ山の生き物調査をやったことがあります。

この時までの調査では植物は480種で、うち帰化植物(植栽種を含まない)は

82種記録されました。

帰化植物の全体の種数に対する比率は17.1%でした。

その後の調査で植物の種数は488種になり、帰化植物として

アメリカオニアザミ(本誌2016年5月号)が見つかり、

比率は17.0%になっています。

これを武蔵野台地にある他の雑木林と比較したものが表1です。

 

20161209155737.jpeg

 

調査地の面積はくぬぎ山が最も広く152haですが、

当地は墓園や資材置き場、産廃処理場で既に50ha余が開発されていて、

雑木林としては実質100ha弱です。

川越市のふれあいの森は市が森林公園計画の一環として

地主から借地して保全しているものです。

武蔵野台地の中ではもっとも植物の種数が少なく、

帰化植物は30種で帰化植物の比率は14.9%でした。

 

上赤坂ふるさとの緑の景観地は狭山市が計画したもので、

中にはさいたま緑のトラスト保全9号地(6ha)があります。

実質くぬぎ山と面積はほぼ同じですが種数は少なく、

帰化植物の種数は53種で比率が15.7%と高くなっていました。

 

北中・南入曽は、所沢市域では雑木林の保全が進み、

さいたま緑の景観地に指定して現在17haが保全対象になっています。

面積は上赤坂の半分ほどですが、帰化植物は35種で比率は13.2%と

武蔵野台地にある4の雑木林の中では一番低くなっていました。

 

参考までに狭山丘陵の所沢市菩提樹地区はわずかに5.2haですが、

ここは東京都水道局の導水管が敷設されているところとしての草地があり、

他に水田、以前水田として使用されていたのが

休耕田として放置されたために湿地になったところ、

上流域に溜め池があり、その奥に雑木林が存在するために

極めて生き物の多様性が豊かな里山の景観が保たれています。

ここの帰化植物比率は11.7%と武蔵野台地の雑木林よりは低くなっていました。

 

くぬぎ山の代表的な帰化植物をあげると、

アレチギシギシ、ヨウシュヤマゴボウ、セリバヒエンソウ、

ヒメオドリコソウ、ワルナスビ、オオイヌノフグリ、オオブタクサ、

ベニバナボロギク、ハルジョオン、ヒメジョオン、セイタカアワダチソウ、

メリケンカルカヤ、ネズミムギ、セイバンモロコシなど。

この中で現在増えているのはセリバヒエンソウ、オオブタクサ、

ベニバナボロギク、メリケンカルカヤなどです。

 

20161209155903.JPG

写真1セリバヒエンソウ

 

20161209155934.JPG

写真2ワルナスビ

 

20161209160009.JPG

写真3オオブタクサ

 

20161209160040.jpg

写真4ベニバナボロギク

 

セリバヒエンソウ(写真1)はキンポウゲ科で、原産はは中国で毒草です。

葉がセリに似ているので付いた名ですが、セリ摘みでは注意が必要です。

ワルナスビ(写真2)はナス科の植物で北アメリカ原産です。

茎に棘があり、セラニンを含み有毒なため、

この名がついたと言われています。要注意外来生物に指定されています。

オオブタクサ(写真3)も北アメリカ原産で

1952年に豆腐の原料の大豆に付着して侵入したと言われています。

キク科で繁殖力が強い植物ですが、根張りは強くなく、

簡単に引き抜けます。花粉症の原因植物です。

ベニバナボロギク(写真4)はアフリカ原産のキク科です。

戦後侵入したもので、山野に多く分布しています。

 

20161209160110.JPG

写真5セイタカアワダチソウ

 

20161209160145.10.12.JPG

写真6メリケンカルカヤ

 

20161209160245.8.16.JPG

写真7セイバンモロコシ

 

20161209160318.5.22.JPG

写真8ネズミムギ

 

セイタカアワダチソウ(写真5)は北アメリカ原産の植物で、

秋に黄色い穂状の花をつけるキク科の雑草です。

日本には切り花用鑑賞植物として導入されたそうです。

当初は花粉症の原因とされたのですが、

これは誤りでブタクサ、オオブタクサが原因植物だそうです。

メリケンカルカヤ(写真6)はイネ科の北アメリカ原産の帰化植物です。

雑木林が伐採されて陽が差し込むようになると

そこに入り込み繁殖を拡大していきます。

林床を雑木が覆うようになれば消滅します。

要注意外来種として指定されています。

在来種のノガリヤスは雑木林の林床に生えますが、

メリケンカルカヤの用に悪さはしません。

セイバンモロコシ(写真7)は英語名ジョンソングラスで、

ヨーロッパから戦後侵入したイネ科の雑草ですが、

時期によってシアン化水素や硝酸塩を含むことから

最近は牧草として利用されず、放置されたものが増えています。

強害雑草となっています。

ネズミムギ(写真8)は 別名イタリアン・ライグラスといい、

ヨーロッパ原産で牧草の他、河川の土手などの緑化に使われています。

昆虫では外来性と暖地性の昆虫がくぬぎ山から4種記録されています。

タテハチョウ科のアカボシゴマダラと外来種とは定義できませんが

以前は西日本までしか分布していなかった

タテハチョウのツマグロヒョウモンクロコノマチョウ

カメムシの仲間のシロヘリクチブトカメムシです。

 

20161209160418.JPG

写真9アカボシゴマダラ

 

20161209160454.jpg

写真10ツマグロヒョウモン♀


20161209160545.JPG

写真11クロコノマチョウ

 

20161209160622.jpg

写真12シロヘリクチブトカメムシ

 

アカボシゴマダラ(写真9)は要注意外来生物に指定されています。

奄美大島に分布する別亜種がいますが、本種は中国大陸産で、

国内の初記録は1995年に埼玉県さいたま市の秋ケ瀬で確認されています。

その後は神奈川県などで発生していましたが、

狭山丘陵を超えて埼玉県に入ったのは2009年でした。

くぬぎ山で最初に記録されたのは2012年8月9日です。

現在北上を続けています。食草はエノキで幼虫で越冬します。

ツマグロヒョウモン(写真10)はヒョウモンチョウの仲間で、

表の羽の色は明るい橙色で、有毒のカバマダラに擬態していると言われています。

幼虫の食草はスミレ類ですが、パンジーやビオラなども食べるので、

市街地でも多く見られます。

クロコノマチョウ (写真11)は暖地性のチョウで、

羽が地味な模様で暗いところを好みます。

夏型と秋型の2型で、秋型はより地味になります。幼虫の食草はジュズダマです。

以前は九州南部が北限でしたが、近年温暖化で北上し、

関東でも越冬しているようです。気温が低くても飛んでいるのを見ることがあります。

シロヘリクチブトカメムシ(写真12)は南方性のカメムシで肉食性です。

ヨトウムシなどの害虫の幼虫を吸汁するので益虫です。

最近は本州、四国にも分布を広げています。

 

このように温暖化で分布を拡大している生き物がいる一方で、気温の上昇で生息圏を奪われているものもいます。

温暖化の問題については今後一層の注意が必要です。

 

石澤直也自然誌vol.53 (2016年10月24日更新)

くぬぎ山の自然 2016年11月号

 

くぬぎ山のバッタについて

 

以前くぬぎ山の鳴く虫について書きましたが、

今回はそれらを除いたバッタ類について書きます。

バッタ目はコオロギ亜目とバッタ亜目に分類され、

埼玉県内のバッタ目は123種記録されています。

そのうちコオロギ亜目(コオロギやキリギリスの仲間)は86種と全体の70%を占め、

バッタ亜目(イナゴやトノサマバッタなど)は37種が知られています。

 

以前の調査でくぬぎ山のバッタ亜目は4科17種が記録され、

ヤマトフキバッタ、ショウリョウバッタモドキ、クルマバッタ

ナキイナゴの4種が絶滅危惧種でした(表1)。

 

20161024172231.jpeg

表1

 

以前、コバネイナゴ、ヤマトフキバッタとツチイナゴなどは

イナゴ科に分類されていましたが、いまはバッタ科になっています。

以下について主だったものについて少し説明します。

 

ノミバッタ(写真1) ノミバッタ科のバッタで

体長は4-6ミリと非常に小さく、春から秋まで発生します。

草むらよりも畑や河川敷などで土を盛ってその中に棲むと言われています。

後脚が大きいので飛び跳ねる以外は中脚と前脚でのそのそ歩き回ります。

くぬぎ山では狭山市域と所沢市域で見つかっています。

ヤマトフキバッタ(写真2) バッタ科で準絶滅危惧種(NT)に分類されています。

大きさは2.5-3.5㎝で♀の方が大きく、初夏から秋にかけて見られます。

羽は退化して移動能力は小さいと言われています。

広葉樹林の林縁に生息しています。

くぬぎ山では狭山市と所沢市域から記録されています。

 

20161024172416.jpg

写真1 ノミバッタ

 

20161024172434.JPG

写真2 ヤマトフキバッタ

 

20161024172453.JPG

写真3 ツチイナゴ

 

ツチイナゴ(写真3) イナゴを大きくしたようなバッタで、斑紋がきれいなバッタです。

体長は5-6㎝でバッタ類に共通して♀の方が大きいです。

食草はクズなどでイネ科のものは食べません。

従って、生息域はクズやカナムグラなどの藪に多く、成虫で越冬します。

くぬぎ山では所沢市域から記録されています。

 

20161024172522.jpg

写真4 ショウリョウバッタ♀

 

ショウリョウバッタ(写真4) 大型のバッタで体色は緑色と

明灰色の2型があります。写真は緑色型です。

草原に生息、6月頃に発生して秋遅くまで見られます。

本種の名前は夏に精霊流しをするときの舟の形に似ていることから

付けられたと言われています。

♂は飛ぶときにキチキチと音を立てるのでキチキチバッタとも

呼ばれています。卵で越冬します。

 

20161024172553.jpg

写真5 ショウリョウバッタモドキ

 

ショウリョウバッタモドキ(写真5) 準絶滅危惧種(NT)に指定されています。

ショウリョウバッタに似ていますが、ほっそりと小型です。

くぬぎ山では所沢市域にのみ生息しています。

後脚は短く、跳ねることは少なく飛びますが、

危険を感じるとイネ科の雑草の茎の裏側にぴたりと体をつけて身を隠します。

活動期は7-11月です。

 

20161024172625.jpg

写真6 トノサマバッタ♀産卵

 

トノサマバッタ(写真6) 代表的なバッタで、大型です。

褐色型と緑色型の2型があります。

年2回発生、発生する場所での個体密度によって、

密度の低いところでは孤独相(単独相)になり、密度が濃いと群生相になり、

羽が長くなって長距離飛行が可能になり、

しばしば大群になって移動します (このため飛蝗と呼ばれていました)。

このため、畑作物が全滅することがあります。飛ぶときに音がします。

 

20161024172657.JPG

写真7 クルマバッタモドキ

 

クルマバッタモドキ(写真7) トノサマバッタに似ていますが少し小型です。

特徴は前胸背の正中線(背の中心線)に次種のような盛り上がりがなく、

ほぼ直線的で、正中線を挟んでX字型の白い斑紋があることです。

春頃から秋まで見られます。褐色型と緑色型の2型があります。

草原のバッタです。

 

20161024172727.JPG

写真8 クルマバッタ♀

 

クルマバッタ(写真8) 準絶滅危惧種(NT)に指定されています。

前種に似ていますが大きく、正中線が盛り上がることで区別できます。

緑色型と褐色型の2型があります。

飛ぶときに後翅が輪を描いたような形になるのでこの名が付いています。

飛翔能力はトノサマバッタよりは劣っています。

草原に生息し、くぬぎ山では所沢市域でのみ見られます。

 

20161024172755.jpg

写真9 イボバッタ

 

イボバッタ(写真9) 褐色の小型のバッタ。

生息域は畑地や草地で明るいところ。

のそのそ這い回る他、良く飛ぶと言われています。

くぬぎ山では所沢市域で記録されています。

 

20161024172837.jpg

写真10 マダラバッタ

 

マダラバッタ(写真10) クルマバッタを小型にしたようなバッタ。

生息地は比較的乾燥した草原です。

くぬぎ山では三芳町域と所沢市域で見られましたが、個体数は少ないです。

 

20161024172908.jpg

写真11 ナキイナゴ♂

 

ナキイナゴ (写真11) 地域個体群(LP)に指定されている絶滅危惧種。

小型のほっそりしたイナゴに似ていて、触角は長く、♂は黄色、

♀は大きくショウリョウバッタの♀のような斑紋があります。

羽は短めでシャカシャカシャカと音を立てます。

草原に生息し、狭山市域と所沢市域で見られました。

 

20161024172941.jpg

写真12 コバネヒシバッタ

 

コバネヒシバッタ(写真12) ヒシバッタ科で、小型。

普通のハラヒシバッタは背が前胸の後ろから凹んでいるのと違って、

本種では盛り上がっていてスマートです。

体色は全体に褐色で斑紋がありません。

ハラヒシバッタが名前の通り草原に多いのに対して、

本種は林縁から林内に生息しています。

くぬぎ山では三芳町域から記録されています。

石澤直也自然誌vol.52 (2016年09月29日更新)

くぬぎ山の自然 2016年10月号

 

シーボルトについて

 

シーボルトが亡くなって今年(2016年)で150年、

10月18日はその命日に当たります。

国立科学博物館では150年を記念して

「日本の自然を世界に開いたシーボルト展」が開催されています。

 

フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト

(Philipp Franz Balthasar von Siebold)はドイツの医者で博物学者でした。

ドイツ南部のヴュルツブルクで1796年に医学界の名門の家に生まれ、

大学では医学の他に博物学や地理学を学んでいます。

その後東洋を研究するためにオランダに行き、

さらにバタヴィア(現在のインドネシア)の

東インド陸軍病院の軍医として配属されています。

その後日本研究を希望して来日、長崎の出島でオランダ商館医として勤務。

ケンペルツンベルクとともに出島で日本の博物を調べ、

日本博物誌を書いています。

 

日本に来た目的には日本の博物の研究の他にも

日本の情報収集の意図があったのではとも言われています。

シーボルトが海外に持ち出した博物標本の他にも日本地図が含まれていて、

出向直後船が難破して流れ着いた荷物の中に、

幕府ご禁制の日本地図が見つかったことから、

出国禁止処分を受け、その後国外追放処分となっています(シーボルト事件)。

 

1830年にオランダに帰り、

数多くの文化的コレクションや動植物の標本を持ち帰りました。

標本は植物2000種、植物標本12000点、ほ乳類動物標本200点、

鳥類900点、魚類750点、は虫類170点、無脊椎動物標本5000以上と

膨大なものだったと言われています。

これらの多くは現在ライデン王立自然史博物館が所蔵しています。

 

日本は1854年に開国して、

オランダとは日蘭通商条約が締結してシーボルトに対する追放令が解除になり、

1859年に更来日しました。

1862年に帰国、その後オランダ政府への標本売却を拒否され、

彼の故郷ドイツのヴュルツブルクに帰り、

1866年10月18日に亡くなりました(Wikipediaより引用)。

 

シーボルトは日本の文化や博物を西洋に広く紹介した功績は大きく、

また、日本の博物学の発展に大きく貢献しています。

彼が命名した生き物は数多くあり、

また彼を顕彰するために彼の名前sieboldを種名や

属名に付した(献名)ものも多く有ります。

 

有名な植物はアジサイで学名はHydrangea macrophyllaですが、

シーボルトは新種としてHydrangea otakusaと

本人の妻「おタキさん」の名前を付けています。

しかし、これはH. macrpphyllaと同種だったそうです。

 

小生が興味のあるトンボの中でオニヤンマ(Anotogaster sieboldii (Selys))、

コオニヤンマ(Sieboldii albardae Selys)や

オオイトトンボ(Cercion sieboldii (Selys)にはSieboldが付いています。

シーボルトが集めた昆虫の標本の多くはライデン大学から

Edmond de Sélys Longchamps(ベルギーの政治家、昆虫学者)に渡り、

上記のトンボについては彼がSieboldに献名したものです。

なお、種名には和名(日本名)と学名(ラテン語)があります。

学名は世界共通です。属名種小名からなり、

これはスウェーデンの生物学者リンネ(Carl von Linné)(遺伝の法則で有名)

によって体系づけられたものです。種小名の後ろに命名者の名が付きます。

 

シーボルトに付けられたものでは命名者は

Siebold或いはSieb.と省略されることがあります。

また、二人で名付けた場合は

Sieb. et Zucc. (Zucc.はZuccarini(ドイツの植物学者)の省略名)など

とも表示されます。

 

20160929163409.jpeg 

表1

 

くぬぎ山の植物にもシーボルト縁の植物が29種、

昆虫ではルリタテハの1種が該当しました(表1)。

以下にくぬぎ山以外のものも含め主だったものについて触れておきます。

 

20160929163505.JPG

写真1 コオニヤンマ

 

コオニヤンマ(写真1)サナエトンボ科のトンボで=丘陵地の湿地や谷筋で見られ、

未熟期には低山地の山頂付近にあがってくることもあります。

アジサイの花が咲く頃出現します。

体長は大きいのですが、頭が小さいのが特徴です。

 

20160929163539.JPG

 

写真2 ヤマナラシの葉

 

ヤマナラシ(写真2)ヤナギ科の木本。

学名のPopulus tremulaでPopulusはポプラの木を意味しているようです。

tremulaは震えるという意味で、葉柄の断面が縦に細く柄が

長いので風が吹くと左右に揺れて音を立て、

それが木全体が鳴るので山鳴らしと名付けられたと言われています。

花は早春に咲きます。

 

20160929163644.JPG

写真3 マユミの実

 

マユミ(写真3)木の材質に弾力性があり、

弓の材料になっていることから名付けられています。

弓の美称も真弓と言われています。

雌雄異株ですが、雌木一本でも実が付くと言われています。

秋には紅葉して実も非常にきれいです。

 

20160929163719.JPG

写真4 ヤマコウバシ

 

ヤマコウバシ(写真4)クスノキ科の落葉低木で、葉や枝には芳香があり、

モチギの別名があります。

葉を乾燥させて粉にして餅に混ぜて食べたことに因んでいます。

Linderaはスウェーデンの植物学者Johann Linderに因んで

クロモジ属につけられた属名です。glaucaは灰緑色を意味します。

雌雄異株で日本には雌株しかないそうです。

 

20160929163748.JPG

写真5 ウツギの花

 

ウツギ(写真5)以前はユキノシタ科とされていましたが、

これとは全く違っていることがわかりアジサイ科になっています。

ウツギというのは茎の中が空洞になっていることに因んでいます。

卯の花の卯はウツギの卯をとって呼ばれたもので、

旧暦4月の卯月というのはこの花の季節に由来しています。

この花が咲く時期は梅雨に入る頃で、垣根などに植えられて、

夏の到来を告げるものとして歌にも歌われています。

 

20160929163827.JPG

写真6 コアジサイの花

 

コアジサイ(写真6) アジサイ科に属していますが、

花はアジサイのように周辺部の花の花弁(実際は萼片)が大きい装飾花はなく、

普通花の両性花(雄しべと雌しべを持つ)だけからなります。

装飾花には訪花昆虫を誘引する役割を持っています。

開花期は6月頃です。

 

20160929163857.JPG

写真7 ウリカエデの花

 

ウリカエデ(写真7) ムクロジ科カエデ属の落葉樹で雌雄異株です。

カエデの仲間ではウリハダカエデなどで性転換が起きていて、

本種でも起こっているそうです。果実はペラ状になっていて翼果で、

風に飛ばされて拡散します。

樹皮は緑色を帯びた灰褐色で、

ウリハダカエデのような裂け目はありません。

葉はウリに似ていて秋には黄葉します。

 

20160929163926.JPG

写真8 オトコヨウゾメ

 

オトコヨウゾメ(写真8)スイカズラ科ガマズミ属の落葉低木。

春4月下旬から5月にかけて咲きます。

花は可憐で実が小さいので、

オトコを冠したのではないかと言われています。

他のガマズミ類の実は大きく子供に食されていたそうです。

属名のViburnumは雪だるまを意味するラテン語で、

代表的なガマズミの花は白い手鞠状になっているので付いた名前です。

種小名のphlebotrichumは葉裏の白い脈を指しています。

 

20160929163953.JPG

写真9 ルリタテハ

 

ルリタテハ(写真9) タテハチョウ科のチョウです。

学名はKaniska canace (Linnaeus, 1763)ですが、

日本のルリタテハは南西諸島産はK. c. ishima (Fruhstorfer, 1899)と

屋久島以北のものをK. c. no-japonicum (Von Siebold, 1824)と

それぞれ亜種に分類されています。

属名のKaniskaは古代インドのカニシカ王に因んでいて、

種小名のcanaceはギリシャ神話にでてくるAeolusの娘Canaceに因んでいて、

ふわふわと風に飛ぶ様を意味したのだろうという説があります。

no-japonicumのnoは本種の翅表面にある白い斑点が

ノに似ているのでそのノをnoとしたものとのこと。

食草はユリ科のサルトリイバラやホトトギスの仲間です。

 

成虫は暖地では年2-3回、寒地では年1回発生して、成虫で越冬します。

翅の裏は保護色になっていて、翅を閉じると黒褐色になるので

周囲に溶け込み目立たなくなります。

成虫は花で蜜を吸うことはなく、獣糞や樹液を吸います。

 

幼虫はトゲで覆われイラガの幼虫に似ていますが、

トゲには毒はありません。

石澤直也自然誌vol.51 (2016年08月31日更新)

くぬぎ山の自然 2016年9月号

 

季節によるキタテハの形態の違い

 

夏も終わり秋が始まるこの季節、よく見ると夏に見られたのと

少し変わったチョウが飛んでいるのを見ることがあります。

キタテハ(Polygonia c-aureum)です。

このc-aureumという学名は翅の裏にある白い斑点模様が

cに似ているために付けられています。

同じ模様と色でよく似ているシータテハの学名は

Polygonia c-albumです。

このキタテハの食草はカナムグラ(アサ科カラハナソウ属)ですが、

このチョウには夏型(写真1)と秋型(写真2)の二つの形態があります。

夏型は概ね5-8月始め頃に発生し9月頃まで見られます。

体色は派手さがありません。翅の裏面は明るい黄色っぽい色で、

形は大きめで、翅の突起も小型です。

飛び方はそれほど敏捷ではありません。

この時期は花は多くなく、

クリ(写真1)やウツギの花やクヌギコナラの樹液場で

吸蜜や吸汁する(写真3)のが見られます。

 

 20160831135916.JPG

写真1 クリの花で吸蜜するキタテハ夏型

 

20160831135949.jpg 

写真2 キクの花で吸蜜するキタテハ秋型

 

 20160831140021.JPG

写真3 樹液場で吸汁するキタテハ夏型

 

一方、9月頃に発生する秋型は翅の色は明るい赤橙色で、

翅の裏は夏型よりも濃い色をしています。

翅は夏型よりも小ぶりで、突起が夏型よりも突き出ているのが特徴です。

この時期はキク科の花が咲き、

それらの花を訪れて吸蜜するのが良く見られます(写真2)。

 

 20160831140046.JPG

写真4 枯れ草上で日向ぼっこのキタテハ秋型

 

また、この秋型は越冬して春に産卵しますが、

越冬後には枯れ草などの上に止まるのが見られ(写真4)

翅を広げて日差しを受けて

日向ぼっこをしている(体温維持のため)のが良く観察されます。

 

この翅の形や色の違いは何のためか、その説明はあまりされていません。

秋型の翅の形と色は越冬の場合、

枯れ葉に紛れるための擬態効果と説明されています。

しかし、枯れ葉の上に止まって越冬しているのは見たことがありませんし、

枯れ葉の上に止まると翅を広げて目立つ赤橙色をさらしています。

 

秋型は体は太めです。

おそらく冬は花など蜜を供給するものがなく、

冬眠していても代謝が進むので、

そのために脂肪を多く蓄積しているものと推定されます。

体が大きく翅が小型化すると、

翼面荷重(単位面積当たりの重さ)が大きくなり、

飛ぶときの羽ばたき周波数は高くなります。

その分代謝によりエネルギーの損失が大きくなります。

これを回避するためには羽ばたきの後で滑空すればよいのです。

おそらくそういう工夫がされていると推定されます。

 

航空力学では、非常に性能の良い翼をそのままの形で大きくしたり、

小さくしたりすると元の性能は得られないと言われています。

秋型の翅の形はそのように翅の形が変わっても

飛翔性能が落ちないための工夫かもしれません。

 

夏型の翅が大きいのは、暑いときに羽ばたくと代謝で体温が上がるので

それを防ぐために翅を大きくして翼面荷重を小さくしているため、

と言えそうです。

翅の裏が明るい色をしているのは

地面からの太陽の反射光を反射するためかもしれません。

 

このように昆虫でも季節によって体型や色を違えているのも

訳があるからと言えます。

石澤直也自然誌vol.50 (2016年07月27日更新)

くぬぎ山の自然 2016年8月号

 

トンボは本当に目が良いのか。

 

真夏はトンボの最盛期です。

あちこちの池や沼、川の岸辺などでトンボの姿を見る機会が増えます。

皆さんはトンボは目が良いと聞いたことがあるでしょう。

本当に目が良いのでしょうか。

トンボを紹介する本でもトンボの頭は全体が目なので、

後方を除いて270度の範囲が見えていると書かれています。

 

トンボの目は複眼と言って小さな個眼の集まりで、

オニヤンマの場合個眼の数は28000個と言われています。

1個の個眼には視細胞が8個ですから、

全体として8×28000=224000個の視細胞があることになります。

一方、人の眼は片方で1億2千万個の視細胞がありますから、

両眼では2億4千万個の視細胞になります。

オニヤンマの1000倍以上です。

 

これからオニヤンマの視力を推定すると

人の普通の視力1.5÷1000=0.0015 およそ0.002と言うことになります。

昆虫の場合、視力は0.01-0.02と言われていますから、大近眼ということです。

トンボは計算から推定してやはり大近眼であることは確かでしょう。

小生は、オニヤンマがお盆の頃エアコンの室外機の前で

じっとホバリングしたり、突進したりしたという報告を読み、

一体何故なのかと疑問に思い実験したことがあります。

 

20160727091030.jpg

写真1 回転板に反応するオニヤンマ♂

 

写真1はオニヤンマの♂が緑色と黒の模様のついた

円板の回転に反応してホバリングしたところです。

回転を止めれば全く反応しませんでした。

円板でなくプロペラの回転にも反応していました。

 

オニヤンマには回転板の大きさや斑紋の色、

回転速度を変えたりして試してみました。

大きな回転板や緑色(黒との対)や回転速度が30Hz前後で

一番頻度が高い反応を示していました。

回転板が大きければ大きいほどより遠くからより強く反応していました。

緑色というのはオニヤンマの複眼の色です。

トンボの場合認識出来る色は複眼の色で決まると言われていますから

オニヤンマにとっては緑色が基本のようです。

因みに昆虫は紫外線を認識できますから、

トンボの場合、紫外線領域から複眼の色の領域まで認識することになります。

赤トンボでは複眼が赤いので紫外線から赤まで全部の領域を認識できます。

また、回転速度が30Hzにもっとも高い反応を示したと言うことは、

このトンボの通常の飛翔では

概ね30Hz前後が羽ばたきの周波数になっていることを証明するものです。

 

このようにオニヤンマで一応の回転板への反応の仕方が確かめられたので、

更に何故反応するのかを試してみました。

今度は回転板ではなく、

プロペラにしてサナエトンボ科のウチワヤンマの♂に試してみました。

 

20160727091109.JPG

写真2 ダミーに交尾したウチワヤンマ♂

 

写真2はこのトンボの♂がプロペラの回転に反応して

このトンボのダミーにしがみついて交尾を仕掛けるのを見ることが出来ました。

つまり、ダミーをこのトンボの♀と見なしたということです。

ウチワヤンマの♂はダミーも♀も区別が出来ない、非常に眼が悪いということが証明されたのです。

トンボは眼が悪いのです。

 

私たちは先入観で見ていたことになります。

♂同士追いかけあったり、♂がやってくると相手を追い払ったりすることを

喧嘩とか縄張り闘争だとか言っていましたが、この実験でそうではなく、

♂か♀か見分けがつかなくて相手を♀と思い込んで追いかけあっていることが分かったのです。

 

プロペラや円板の回転ではチラチラします。

トンボも羽ばたくときは羽が受ける光はチラチラします。

つまりトンボは目が悪いのでこのチラチラするものを

♀が羽ばたいていると思い込んで飛び立って追いかけたりしていたのです。

これは♂が♀を求めているときとか、あるいは餌の虫を見つけて追いかけるときなどは

すべてこのチラチラを見ているだけなのです。

しかし、♀はダミーには一切反応しません

♀は賢いのです。♂が近づいても羽ばたきしなければ見つかりません。

従って、♀はじっとしています。

トンボの前で指をクルクル回すと捕まえられるというのはトンボのこの性質を使っているのです。

捕まるのは♀なのです。

 

このようにダミーのプロペラや円板の回転に反応するトンボについては他の種にも試してみました。

写真3から写真12まではそれら試したトンボの♂の写真です。

 

20160727091204.jpg

写真3 回転板に反応するムカシヤンマ♂

 

20160727091255.jpg

写真4 ムカシトンボ♂

 

20160727091327.jpg

写真5 プロペラに飛ばされたクロスジギンヤンマ♂

 

20160727091357.jpg

写真6 サラサヤンマ♂

 

20160727091723.jpg

写真7 ヤマサナエ♂

 

20160727091759.jpg

写真8 激しく反応するシオヤトンボ♂

 

良く反応したのはムカシヤンマ(写真3)ムカシトンボ(写真4)ヤンマ類ではクロスジギンヤンマ(写真5)

サラサヤンマ(写真6)サナエトンボ科ヤマサナエ(写真7)シオヤトンボ(写真8)も良く反応しました。

ヤマサナエの♂はプロペラの回転に飛びついてプロペラに当たり体をひっくり返されていました(写真7)

 

20160727091843.jpg

写真9 オオシオカラトンボの産卵ペアに干渉するシオカラトンボの♂ 

 

オオシオカラトンボシオカラトンボも反応しましたが、

写真9は、オオシオカラトンボのペアが産卵しているところに

シオカラトンボの♂がやってきて、

オオシオカラトンボの♀を警護しようと割り込んできたところです。

つまりシオカラトンボは自分の♀と、

オオシオカラトンボの♀との区別が出来ていないことを示す例です。

 

20160727091936.jpg

写真10 ショウジョウトンボ♂

 

ショウジョウトンボ(写真10)では赤い色のダミーには

良く反応していましたが、回転を止めたらもっと激しく当たっていました。

赤色に特別な意味があるようです。

♂は赤く、♀は黄土色なので、色で♂♀の区別が出来ているのかもしれません。

 

20160727092014.jpg

写真11  黒いプロペラに反応するアオハダトンボ♂ 

 

20160727092041.jpg

写真12 ミヤマカワトンボ♂

 

また、カワトンボの仲間ではアオハダトンボ(写真11)

ミヤマカワトンボ(写真12)が良く反応していました。

アオハダトンボの♂は黒いプロペラには良く反応しましたが、

透明な羽のプロペラには身動きせずじっとして、

近づけると後退して隠れてしまいました。

ミヤマカワトンボでは反応する時間は正午過ぎからで、

♂あるいは♀に対しても午後には激しい反応が見られました。

 

多くのトンボで試してみたのですが、

オオヤマトンボコヤマトンボコシアキトンボでは

全く反応は見られませんでした。

また、アカネ属のトンボも反応はみられませんでした。

トンボによって反応が違うことは、

今後もっと実験を積み重ねて調べる必要があります。

 

皆さんもご興味がありましたら試してみて下さい。

石澤直也自然誌vol.49 (2016年06月30日更新)

奥武蔵の渓谷のアキアカネ

 

梅雨の晴れ間はアキアカネが水田地帯から山地へ移動していく時です。

多くのアキアカネは高い山に移動していきますが、

この時期、埼玉県飯能市の奥、奥武蔵の西吾野の渓谷ではアキアカネが見られます。

 

ここでは夏でもアキアカネが見られることを教えてくれたのは

西武鉄道の運転士だったSさん(故人)です。

今から20年以上も前のことで、それ以来ここでアキアカネを調べてきて、

アキアカネが暑いときに日向で逆立ちすることで

体温上昇を防いでいることを知ることができました。

 

2002年から2004年まで3年間実施された

全国赤トンボ調査(農と自然の研究所・むさしの里山研究会と

(社)農村環境整備センター共催)に参加して、それ以来調査期間終了後も

ここ西吾野(図1)でアキアカネの越夏の様子を調べてきて15年になりました。

 

20160630150234.jpg

図1 アキアカネの調査地地図

 

20160630163650.jpg

図2 吾野のアキアカネの推移

 

調査地は図1に示す西吾野駅地点Aから北の間野の地点Bまでの1.5㎞です。

高麗川に合流する北川沿い(写真1)の道路(図1の緑色の部分)の

両側10メートルを調査範囲として、

電線や木の枝先に静止するアキアカネの個体数を調べました。

結果は図2に示してあります。

 

20160630150410.JPG

写真1西吾野の北川の渓流

 

2008年(目撃数0)、2014年(1頭)を除いて2007年から2013年までは

 毎年100頭以上が目撃されています。

最近は減っていますが。

 

20160630150455.JPG

写真2枝先に止まるアキアカネ♂

 

20160630150655.jpg

写真3電線に止まるアキアカネ♀

 

特徴的なのは木の枝に静止するアキアカネ(写真2)が有意に

少ない(15年間の総計316頭、24.3%)ということで(P<0.05)、

多くは電線に静止(写真3、総計985頭、75.7%)していました。

ナツアカネ、マユタテアカネやヒメアカネなどは夏場は日陰で過ごしますが、

アキアカネは日向が好きな赤トンボと言えます。

 

6月下旬の目撃頭数と7月上旬(2002年は7月12日)のとでは

7月の方が多いのですが差はありませんでした(P>0.4)。

気温と静止位置との関係はあまりありません。

今年(2016年)の6月27日は59頭記録されましたが、

電線に静止した個体数と木の枝先に静止した個体数は

それぞれ29と30でほぼ同数でした。

 

ここでの調査は1回1時間から1時間半位で済むのですが、

当地に飛来したアキアカネを見ることはもう夏が来たと

実感させられて新鮮な気持ちになります。

中にはもう色付き初めているものも見られ、

飛来して2週間もすると赤くなっているものも見られたりします。

特に♂で著しく、♀ではあまり早く成熟するのは見られません。

 

20160630150750.JPG

写真4ミヤマカワトンボ♂

 

これらの個体は渓流の流れの上に張り出す木や枯れ枝の先に止まり

暑さをしのいでいたりします。

そして夏の終わり頃までに体を造り秋の低地への移動・産卵に備えます。

今回の調査ではミヤマカワトンボの♂1頭に出会いました(写真4)。

 

面白いことに小生の先に立ってあたかもミチオシエ(甲虫のハンミョウの別名)のように飛んでは止まり、

飛んでは止まりを繰り返し、調査の終点から帰ってくるときも現れて道の先頭を飛んでいました。

 

20160630150830.JPG

写真5コオニヤンマ

 

20160630150907.JPG

写真6モンシロチョウ

 

他にも北川の岸辺ではコオニヤンマ(写真5)が見られました。

このサナエトンボは当地では比較的見られます。

道端に面した農家の庭ではベニシジミやヤマトシジミに混じってモンシロチョウ(写真6)が

花に止まって吸蜜していました。

 

20160630150943.JPG

写真7ナツツバキ

 

20160630151050.JPG 

写真8ヒメフウロソウ

 

また、調査地の終点のB地点では住む人がいなくなった住宅の庭先で

ナツツバキ (写真7)が寂しく咲いているのが見られ、

また、もう一軒の家の石垣ではヒメフウロソウ(写真8)らしい花が

あちこちに咲いて目を楽しませてくれました。

 

20160630151128.JPG

写真9マタタビ

 

岸辺のあちこちでマタタビ(写真9)が白い葉を茂らせていました。

あまり注意してみてこなかったかもしれませんが、

このところこの植物が増えているような気がします。

 

20160630151204.JPG

写真10渓流を泳ぐウグイ

 

20160630151240.JPG

写真11ユウスゲ

 

澄んできれいな北川の渓流ではウグイ(写真10)が活発に泳いでいました。

帰りの道では北川を渡る橋の近くでヤブカンゾウの他に

ユウスゲ(写真11)の花を見ることができました。

この花は夕方に咲き、翌日のお昼頃に萎むと言われています。

 

写真は10時半前に撮られたものですが、

花びらの周りが丸まって萎れが始まっているのが見られました。

 

1時間半ほどの調査でしたが大変楽しい一時でした。

 

石澤直也自然詩vol.48 (2016年05月30日更新)

くぬぎ山の自然 2016年6月号

 

梅雨時の花

 

梅雨時はうっとうしく花を見る機会が少なくなります。

しかし、この時期雑木林を訪れると結構色々と咲いている花を見かけます。

また、花だけでなく花の後の実もきれいなものがあります。

林床ではこの時期イチヤクソウ(写真1)が咲きます。

 

 20160530092311.JPG

写真1イチヤクソウ

 

 20160530092351.JPG

写真2ギンリョウソウ

 

この花はツツジ科に属し、同じくツツジ科のギンリョウソウ

 (他の分類ではシャクジョウソウ科、写真2)もこの時期に林床の木陰で咲きます。

この花はベニタケ属菌類に寄生して、

この菌類を経由して樹木から間接的に栄養分を摂取していると言われています。

また、ユリ科のタチシオデもこの時期に花をつけます。

雌雄異株で、写真3雄花です。蔓性のシオデは花期が遅く7〜8月です。

 

 20160530092419.JPG

写真3タチシオデの花

 

20160530092439.JPG

写真4ヒメヤブラン

 

ヒメヤブラン(写真4)もこの時期に林床を飾ります。

ランと言ってもラン科ではなくキジカクシ科に属していてヤブランの仲間です。秋に濃紫色の実が成ります。

くぬぎ山ではグラウンド跡地があり、

ここではこの時期ナワシロイチゴ(写真5)が実をつけます。

 

 20160530092500.JPG

写真5ナワシロイチゴの実

 

この花は地味で萼の中に薄桃色の花弁が乗っています。

この実は非常に澄んだ紅色をしていて食べられます。

また、この時期草原ではラン科のネジバナ(写真6)も見られます。

ご覧の通り、花が花茎にネジのようにまとわりついて咲きます。

 

20160530092522.JPG 

写真6ネジバナ

 

 20160530092543.jpg

写真7ウメモドキ雄花

 

林縁ではウメモドキ(雄花、写真7)が咲いています。

モチノキ科に属し、雌雄異株で白花が雌花(写真8)でくぬぎ山では雌株が見られました。

 

20160530092604.jpg

写真8ウメモドキ雌花

 

葉が梅に似ていることからつけられた名前です。

花よりも実が奇麗で鑑賞の対象になっているとのこと(写真9)。

 

20160530092630.JPG

写真9ウメモドキの実

 

20160530092651.JPG

写真10ムラサキシキブ

 

また、ムラサキシキブ(写真10)もこの時期に咲きます。

クマツズラ科の落葉樹で、葉は秋に黄葉します。

実は10月頃に紫色に熟し、この色が紫式部を連想したのかもしれません(写真11)。

大変奇麗な木の実です。

 

20160530092718.JPG

写真11ムラサキシキブの実

 

20160530092742.JPG

写真12キササゲの花

 

最後にキササゲ(写真12)を紹介します。

ノウゼンカズラ科の落葉高木で中国原産です。

果実は細長くササゲに似ていることからキササゲと呼ばれています。

 

石澤直也自然詩vol.47 (2016年04月25日更新)

くぬぎ山の自然 2016年5月号

 

アザミの花

 

アザミはキク科アザミ属(Cirsium)とそれに類する植物の総称で、

英語ではthistleと言います。

日本では60種以上あり、世界中では300種ほどあります。

アザミ属の花は、花粉と蜜によって虫を誘う虫媒花です。

キク科の植物の花の特徴は、多数の筒状の花(筒状花という)の集合で、

アザミの花の一つ一つは長く伸びるめしべと

それを取り巻くおしべを備えています。

アザミの花は虫が止まるとおしべが引っ込んでめしべと擦れ、

花粉を押し出します。花を撫でると白い花粉が吹き出るのは

このような仕組みがあるからです。

花の色はピンクっぽい紫色をしています(Wikipediaより引用)。

アザミの葉には棘がありそれに刺されることがあり、

欺くことからアザミと言ったとか、

アザは棘を意味して棘のある実からアザミとなったとか、

また、アザムは傷つけるという意味でそれが転化して

アザミになったなど諸説あります。

 

20160425161700.JPG

写真1 ノアザミ

 

20160425161810.JPG

写真2 キツネアザミ

 

20160425161849.JPG

写真3 ノハラアザミ

 

くぬぎ山では5月頃に咲くノアザミ(写真1)

キツネアザミ(写真2)と夏の終わり頃から咲き出す

ノハラアザミ(写真3)が分布しています。

ノアザミ(Cirsium japonica)の花は1株から数本の茎が

枝分かれして咲きますが、花は大きくきれいです。

他のアザミ類は夏から秋にかけて咲くものが多いのですが、

本種は春に咲きます。

キツネアザミ(Hemistepta lyrata)はキツネアザミ属の花で枝分かれが多く、

一株から多数の小型の花が咲きます。

葉には他のアザミのような棘はありません。

日本には古い時代に渡来したと言われています。

秋に咲くノハラアザミ (Cirsium oligophyllum) はノアザミに似ています。

本州中部以北に分布しています。

ノアザミとの違う点は総包がねばねばしない点です。

アザミの花にやってくる虫たちにも色々あります。

 

20160425162017.JPG

写真4 アゲハチョウ

 

20160425162049.JPG

写真5 キアゲハ

 

チョウではアゲハの仲間(アゲハ(写真4)キアゲハ(写真5)

アオスジアゲハクロアゲハ)やシロチョウの仲間や

タテハチョウの仲間(キタテハやアカタテハなど)、

ヤガの仲間ではホシホウシャクや甲虫では

 

20160425162154.JPG

写真6コアオハナムグリ

 

20160425162240.JPG

写真7 トラマルハナバチ

 

花粉食のコアオハナムグリ(写真6)、たまにアオハナムグリなどもやってきます。

ハチ類ではミツバチコマルハナバチ(他地域ではクロマルハナバチなど)や

トラマルハナバチ(写真7)の仲間や大型のクマバチ

ヒゲナガハナバチキマダラハナバチの仲間など結構多いです。

また、ハナアブの仲間もいます。

これらの虫たちはいずれも蜜を吸わせてもらう代わりに花粉を運んで受粉を助けています。

自然の中では相互に助け合い(共生)が行われています。

 

アザミの中には外来種もあります。

その代表的なのがアメリカオニアザミ(Cirsium vulgare)です。

在来種のオニアザミ(Cirsium borealinipponense)は

日本海側に分布していて、トゲトゲしいのですが、

これよりも遙かに強い棘があるのが特徴です(写真8)

 

20160425162318.JPG

写真8 鋭いアメリカオニアザミの棘

 

そのために英名でもSpear thistleと名付けられています。

ヨーロッパ原産で、北アメリカ経由で1960年代に北海道に牧草の種に

混入して移入されたと言われています。

このアザミはスコットランドの国花となっていて、

その由来は、昔スコットランドはデーン人の侵入に度々脅かされていました。

ある時デーン人が夜襲をかけてきて、足音を消すために裸足だったため、

暗がりでアメリカオニアザミの株を踏んづけてあまりの痛さに大声を発してしまい、

それがスコットランド兵の知るところとなり、

彼らはデーン人を撃退できたのだそうです。

それでアザミはスコットランドを救ったと国花になったのだそうです。

 

アメリカオニアザミは危険なので見つけ次第根こそぎ取り除く必要があります。

 

最後にあざみの歌の話をします。

あざみの歌は昭和24年8月8日からNHKが放送し、

NHKの「日本の歌ふるさとの歌百選」に選ばれました。

この歌の作詞者横井弘氏で、

東京にあった実家は昭和20年の空襲で焼け出され、

少年兵として復員してきた当時18歳の横井青年は、

9月に家族が疎開している長野県下諏訪に行き、

霧ヶ峰の八島湿原を訪れ、野に咲くアザミの花を見て、

思い抱く女性の姿をこの花に見立てて詠んだ詩あざみの歌なのだそうです。

作曲者八州秀章氏です。

歌詞の一番だけを紹介します。

 

山には山の 愁いあり

海には海の悲しみや

ましてこころの 花園に

咲しあざみの花ならば

 

この時詠ったアザミの花はノハラアザミではないかと言われています。

この歌の歌碑は1987年6月に八島湿原に建てられて、

ここには八島湿原ビジターセンターあざみ館が開館しています。

ここは霧ヶ峰から和田峠を越えて美ヶ原へ通じる

ビーナスラインの途中に位置しているところで、

高層湿原の湿地になっているところです。

一度訪れられると良いです。

石澤直也自然詩vol.46 (2016年03月21日更新)

くぬぎ山の自然 2016年4月号

 

桜談義

桜前線が北上しています。今年は桜の開花が早まっていると言われています。

東京の上野公園は桜で有名で、満開の桜を見に沢山の人出で賑わいます。

ここ武蔵野台地では桜の名所はなく、所沢市内では航空記念公園で

500本のソメイヨシノや東川では牛沼など5.4kmに亘り水路沿いにソメイヨシノが、

小手指駅北口から西に行ったところで砂川堀沿いに枝垂れ桜(写真1)が見られます。

また、小手指駅北口にある西友の北側の駐輪場のところには

米国の首都ワシントンのポトマック河畔のポトマック桜が里帰りしたものが植わっており、

毎年大きくてピンクの濃い花を見せてくれます(写真2)。

 

20160321103555.JPG

写真1枝垂れ桜

 

20160321103623.JPG

写真2ポトマック桜

 

この桜は1912年にアメリカ合衆国大統領ウィリアム・タフト氏の夫人が

日本の桜を首都ワシントンのポトマック河畔に植えたいということを知って

時の東京市長尾崎行雄が日米親善のために、荒川堤の桜並木の桜の穂木の苗木を

米国に贈ったものとのことです(Wikipediaから引用)。

 

20160321103709.jpg

写真3狭山湖畔の風景

 

また、狭山湖畔も桜で有名で桜の季節には人出で賑わいます(写真3)。

このように桜は春を彩る日本の代表的な花で、バラ科のスモモ属(Prunus, Cerasus)で、

中でもソメイヨシノ(学名Cerasus × yedoensis (Matsum.) A.V.Vassil. 'Somei-yoshino')は

エドヒガンとオオシマザクラを交配させて誕生したもので代表的な品種です。

 

桜は英語でcherry blossomと呼ばれていますが、

sakuraとも呼ばれています(Wikipediaから引用)。

桜の開花は暖地で早いのですが、種類によって違い、静岡県伊豆河津町では河津桜(写真4)が2月頃に咲きます。

 

20160321103728.JPG

写真4河津桜

 

寒い時期に咲くので花期は1ヶ月にも及びます。

この桜はカンヒザクラとオオシマザクラの自然交配で出現したものと言われ、花はピンクが濃く大型です。

エドヒガンとマメザクラとの交雑種といわれるコヒガンザクラは

長野県高遠町の高遠城址公園に咲くタカトウコヒガンザクラ(写真5)が有名です。

 

20160321103916.jpg

写真5高遠のコヒガンザクラ

 

今から34年前訪れて撮影したので写真が赤っぽくなりました。非常に綺麗な桜でした。

ここの桜を見て日本の歴史の一部を垣間見ることになりました。

 

高遠城は元は武田信玄が諏訪氏一門の高遠頼継から奪い、四男の武田勝頼に統治させていたのですが、

織田信長に攻められ落城、最終的には徳川のものとなり、内藤清枚が入って内藤家が明治まで治めています。

しかし、明治6年(1873年)に全国城郭存廃ノ処分並兵営等撰定方(廃城令)が発布されて高遠城も廃城されてしまいました。

そこで明治8年に城址公園として整備することになり、桜馬場に植わっていたものを城跡に植えたものが

現在のタカトウコヒガンザクラで、ここでは他の種の桜は植えず、全てコヒガンザクラのみとのことです。

この桜は140年も経っているのに古さを感じさせません。

ここの東南の隅(高遠町歴史博物館の敷地)には江戸時代、徳川家宣の時に歌舞伎役者生島新五郎と情を通じたとされて

当地に流された大奥の絵島の家(絵島囲み屋敷)がありました。絵島は情を通じたことを否定したのですが、

幽閉は厳しく、一汁一菜の食事しか認められず外出も禁じられたそうです。

しかし、行いが正しく、将軍吉宗の時に赦免の嘆願書が上げられ、外出が認められるようになったとのこと。

吉宗は話の分かる将軍だったようです。

一寸暗い話で申し訳ありません。

 

さて、桜前線の北上で訪れてみたいのは、秋田の角館です。

武家屋敷の通りの両側には立派な枝垂れ桜が咲きます。武家屋敷は茅葺き屋根で桜の花と釣り合っています。

更に北上すると弘前城の桜になります。ここの桜はソメイヨシノですが、花の色が濃くピンクです。

桜は北に行くほどピンクが濃くなるようです。

ソメイヨシノだけでなくヤマザクラ(写真6)も同じではと思いました。ソメイヨシノの花が終わる頃ヤマザクラが咲き出します。

 

20160321103959.JPG

写真6ヤマザクラ

 

20160321104139.JPG

写真7ヤマザクラの大木

 

この花は葉の芽吹きと同時に咲きます。地味ですが、きれいなものです。

写真7は所沢市山口の菩提樹地区に咲くヤマザクラの大木です。開花は見事なものでした。

サクラの周りは草刈りが行き届いているのでここで休んで行く人が多いです。

 

以前、実家に帰る時奥羽本線経由で福島から板谷峠を越えて山形県の米沢に出ました。

峠を登っていく時に谷の向こう側にヤマザクラが見られ、それらはピンクのヤマザクラでした。

これはここだけではなく、庄内地方の山奥のヤマザクラもピンクでした。

 

20160321104249.JPG

写真8鶴岡市の菅原土手の桜

 

20160321104313.JPG

写真9菅原土手からの月山

 

写真8は鶴岡市の赤川の土手に咲くソメイヨシノです。

ここからは東に月山(写真9)が見え、そのゆったりした山の稜線は藤沢周平の時代劇によく出てきます。

 

このように桜には花そのもののすばらしさの他に、桜にまつわることでも有名なものがあります。

小説では坂口安吾の「桜の森の満開の下」があります。また、チェーホフの「桜の園」などです。

また、次の和歌が有名です。

 

在原業平

 世の中に たえてさくらの なかりせば 春の心は のどけからまし

 

紀 友則

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ

 

小野 小町

花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに

 

源 義家

吹く風を なこその関と 思へども 道も世に散る 山桜かな

 

与謝野晶子

清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 こよい逢う人 みなうつくしき

 

20160321104354.JPG

写真10八重桜

 

最後に、一番遅く咲くのは八重桜(写真10)です。ぼってりとしてふくよかに咲きます。

種類としてはカンザン、一葉,普賢象や鬱金が知られています。

婚礼の席で良く使われる桜湯は八重桜の花びらを使っています。

NHKの大河ドラマで八重の桜があります。山本八重という会津藩士の家に生まれ、

女性の銃手として戊辰戦争を戦い抜いて、その後京都に行き、アメリカ帰りの新島襄と出会って同志社大学を設立した立役者です。

まさに八重の桜の貫禄十分な姿です。

桜はまさに日本のシンボルです。大いに鑑賞し楽しみましょう。

石澤直也自然詩vol.45 (2016年03月01日更新)

くぬぎ山の自然 2016年3月号

 

潜在自然植生について

 

潜在自然植生(potential natural vegetation)という言葉が

雑木林の保全で語られることがあります。

この言葉を最初に唱えた人はドイツ人の

ラインホルト・チュクセン(Reinhold Tuexen)で、

人による干渉がなければその時の気候条件に合致した植生になる、

という植物生態学上の概念を唱えました(Wikipediaより引用)。

 

日本で最初にこれを唱えた人はチュクセンの弟子だった

横浜国立大学名誉教授の宮脇昭氏で、

1970年代に論文を発表しています。

それによると、例えば関東地区では雑木林

(殆どは昔の農家が手入れしたコナラやクヌギが主体の二次林)は

手入れせず放っておいたらシラカシが主体の

常緑広葉樹林になるというものでした。

彼のこの説には異論を唱える人もいますが、

最近の地震災害で彼が指導して造成した樹林地内では

地震による被害が軽減されたと言われています。

 

シラカシ(Quercus myrsinifolia、写真1)ブナ科コナラ属の植物で

分布範囲は北は福島県から南は四国、九州に分布していますが、

広く分布しているのは関東平野です。

日本海側では富山県には分布していません。

用途は防風林、防火林や公園樹、街路樹などで、

材質が堅くて様々な器具や木刀に使われるそうです。

 

 20160301090139.JPG

写真1 シラカシの葉

 

20160301091034.JPG

写真2 貧相なシラカシ林の林床

 

20160301091135.JPG

写真3 くぬぎ山の放置された雑木林

 

20160301091217.JPG

写真4 くぬぎ山の伐採更新された雑木林

 

小生は東北の山形県の庄内地方の農村で育ったので、

周りはミズナラブナを主体にした落葉広葉樹林で

常緑樹などは低床に生えるフユツバキユズリハ位で、

春は新緑、秋になれば紅葉が見られるので、

季節の変化を楽しめたものです。

しかし、常緑広葉樹だとこの様な変化はあまり見られず、

違和感を持ちました。

 

最近、市役所などから丘陵地などの植生調査を依頼されることがあるのですが、

そのときにこの潜在自然植生ということを

感じさせられることが度々ありました。

調査区域では長期間殆ど手入れされないところが多く、

そのような所の中にはシラカシが広く占有しているところがありました。

そして特徴的なことはシラカシが優先しているところは

林床が極めて貧相だったことです(写真2)

 

以前、くぬぎ山の所沢市の区域にある雑木林で、

放置されたところ(写真3)と伐採更新したところ(写真4)

昆虫相と植生を調べたことがありました。

放置された所の昆虫と植物の種数はそれぞれ36種、85種で、

伐採更新されたところは58種と87種でした。

植物ではあまり差はありませんでしたが、昆虫では有意な差でした。

伐採で樹冠の閉鎖が解かれると日照が増し、昆虫相が豊かになります。

放置されたところはシラカシが優先する薄暗い雑木林ですから、

活動に太陽の日差しが必要な昆虫は当然伐採更新されたところに

集まることになります。植生の中身も違って放置林ではシダ類が多く、

日陰に強い植物に偏る傾向がありました。

 

最近、狭山丘陵にある霊園では管理する雑木林に生育する

シラカシ(多くは中層に位置してまだ大木になっていない)を伐採したところ、

保全会議で伐採を問題視する人がいました。

元々自然に戻すのだから伐採しないのが当然という意見でした。

 

しかし、小生はこういう意見には反対です。

潜在自然植生の観点からシラカシを放置したら、

生物多様性を失うことになるからです。

原生林というのは広いところが原始状態だから

生物の多様性に富んでいるのです。

しかし、狭いところに限ったら生物の多様性は極めて貧弱になります。

狭い範囲に限って同一面積の多様性を見たら二次林の雑木林の方が

はるかに多様性に富むと言うことは学説的にも認められていることです。

何でも自然に任せるのが良い訳ではありません。

 

昔の農家はシラカシを嫌っていました。

何故ならシラカシの葉は堅く、発酵して堆肥になるのに時間がかかり、

落葉は春なので、春に耕して種蒔きや植え付けをやる農作業の日程に合いません。

従って、葉が柔らかく秋に落葉するコナラやクヌギを好んで雑木林を造成したのです。

また、木質が柔らかいので薪や炭焼きに適していました。

 

戦後10年以上経過してからは燃料を石油に依存するようになり、

これらの二次林は放置されることになりました。

これらの雑木林は伐採して放置されるとシラカシが優先してきて、

まさに潜在自然植生の林に変わってしまい、

あちこちでこのような雑木林が最近目立ってきています。

 

昔の農家は自然保護とか生物多様性などの考えは持っていませんでしたが、

彼らは伐採更新で二次林を維持してきました。

今、こういう所で生物の多様性が見られるのは昔の農家のお陰なのです。

 

自然保護だ、原生林に戻せなどと

狭い雑木林を原始林に(実際は放置二次林)にしても生物多様性は維持できません。

本当の原始林など日本には西表島、沖縄本島北部や富士山の樹海くらいでしょう。

100haくらいのところを放置して原始林(放置二次林)にしても

本当の原始林にはなりません。

 

生物多様性を維持するなら、いまある二次林はモニタリングと

保存すべきものへのマーキングを徹底して伐採による萌芽更新で

昔の農家がやってきた方法で雑木林を管理することです。

 


前のページ |  石澤直也自然詩トップへ戻る |  次のページ
石澤直也のくぬぎの森環境塾自然詩
守ろう日本のミツバチを
栗よりうまいサツマイモ 川越芋 武直園
毎日地元新鮮野菜配達人 関谷農園
地下4mの世界のウド作り
まんが日本昔話の原作者
三富今昔語りべ館