石澤直也自然誌vol.54 (2016年12月09日更新)
くぬぎ山の自然 2016年12月号
くぬぎ山の外来種の生き物
2003-2004年にかけてくぬぎ山の生き物調査をやったことがあります。
この時までの調査では植物は480種で、うち帰化植物(植栽種を含まない)は
82種記録されました。
帰化植物の全体の種数に対する比率は17.1%でした。
その後の調査で植物の種数は488種になり、帰化植物として
アメリカオニアザミ(本誌2016年5月号)が見つかり、
比率は17.0%になっています。
これを武蔵野台地にある他の雑木林と比較したものが表1です。
調査地の面積はくぬぎ山が最も広く152haですが、
当地は墓園や資材置き場、産廃処理場で既に50ha余が開発されていて、
雑木林としては実質100ha弱です。
川越市のふれあいの森は市が森林公園計画の一環として
地主から借地して保全しているものです。
武蔵野台地の中ではもっとも植物の種数が少なく、
帰化植物は30種で帰化植物の比率は14.9%でした。
上赤坂ふるさとの緑の景観地は狭山市が計画したもので、
中にはさいたま緑のトラスト保全9号地(6ha)があります。
実質くぬぎ山と面積はほぼ同じですが種数は少なく、
帰化植物の種数は53種で比率が15.7%と高くなっていました。
北中・南入曽は、所沢市域では雑木林の保全が進み、
さいたま緑の景観地に指定して現在17haが保全対象になっています。
面積は上赤坂の半分ほどですが、帰化植物は35種で比率は13.2%と
武蔵野台地にある4の雑木林の中では一番低くなっていました。
参考までに狭山丘陵の所沢市菩提樹地区はわずかに5.2haですが、
ここは東京都水道局の導水管が敷設されているところとしての草地があり、
他に水田、以前水田として使用されていたのが
休耕田として放置されたために湿地になったところ、
上流域に溜め池があり、その奥に雑木林が存在するために
極めて生き物の多様性が豊かな里山の景観が保たれています。
ここの帰化植物比率は11.7%と武蔵野台地の雑木林よりは低くなっていました。
くぬぎ山の代表的な帰化植物をあげると、
アレチギシギシ、ヨウシュヤマゴボウ、セリバヒエンソウ、
ヒメオドリコソウ、ワルナスビ、オオイヌノフグリ、オオブタクサ、
ベニバナボロギク、ハルジョオン、ヒメジョオン、セイタカアワダチソウ、
メリケンカルカヤ、ネズミムギ、セイバンモロコシなど。
この中で現在増えているのはセリバヒエンソウ、オオブタクサ、
ベニバナボロギク、メリケンカルカヤなどです。
写真1セリバヒエンソウ
写真2ワルナスビ
写真3オオブタクサ
写真4ベニバナボロギク
セリバヒエンソウ(写真1)はキンポウゲ科で、原産はは中国で毒草です。
葉がセリに似ているので付いた名ですが、セリ摘みでは注意が必要です。
ワルナスビ(写真2)はナス科の植物で北アメリカ原産です。
茎に棘があり、セラニンを含み有毒なため、
この名がついたと言われています。要注意外来生物に指定されています。
オオブタクサ(写真3)も北アメリカ原産で
1952年に豆腐の原料の大豆に付着して侵入したと言われています。
キク科で繁殖力が強い植物ですが、根張りは強くなく、
簡単に引き抜けます。花粉症の原因植物です。
ベニバナボロギク(写真4)はアフリカ原産のキク科です。
戦後侵入したもので、山野に多く分布しています。
写真5セイタカアワダチソウ
写真6メリケンカルカヤ
写真7セイバンモロコシ
写真8ネズミムギ
セイタカアワダチソウ(写真5)は北アメリカ原産の植物で、
秋に黄色い穂状の花をつけるキク科の雑草です。
日本には切り花用鑑賞植物として導入されたそうです。
当初は花粉症の原因とされたのですが、
これは誤りでブタクサ、オオブタクサが原因植物だそうです。
メリケンカルカヤ(写真6)はイネ科の北アメリカ原産の帰化植物です。
雑木林が伐採されて陽が差し込むようになると
そこに入り込み繁殖を拡大していきます。
林床を雑木が覆うようになれば消滅します。
要注意外来種として指定されています。
在来種のノガリヤスは雑木林の林床に生えますが、
メリケンカルカヤの用に悪さはしません。
セイバンモロコシ(写真7)は英語名ジョンソングラスで、
ヨーロッパから戦後侵入したイネ科の雑草ですが、
時期によってシアン化水素や硝酸塩を含むことから
最近は牧草として利用されず、放置されたものが増えています。
強害雑草となっています。
ネズミムギ(写真8)は 別名イタリアン・ライグラスといい、
ヨーロッパ原産で牧草の他、河川の土手などの緑化に使われています。
昆虫では外来性と暖地性の昆虫がくぬぎ山から4種記録されています。
タテハチョウ科のアカボシゴマダラと外来種とは定義できませんが
以前は西日本までしか分布していなかった
タテハチョウのツマグロヒョウモンとクロコノマチョウ、
カメムシの仲間のシロヘリクチブトカメムシです。
写真9アカボシゴマダラ
写真10ツマグロヒョウモン♀
写真11クロコノマチョウ
写真12シロヘリクチブトカメムシ
アカボシゴマダラ(写真9)は要注意外来生物に指定されています。
奄美大島に分布する別亜種がいますが、本種は中国大陸産で、
国内の初記録は1995年に埼玉県さいたま市の秋ケ瀬で確認されています。
その後は神奈川県などで発生していましたが、
狭山丘陵を超えて埼玉県に入ったのは2009年でした。
くぬぎ山で最初に記録されたのは2012年8月9日です。
現在北上を続けています。食草はエノキで幼虫で越冬します。
ツマグロヒョウモン(写真10)はヒョウモンチョウの仲間で、
表の羽の色は明るい橙色で、有毒のカバマダラに擬態していると言われています。
幼虫の食草はスミレ類ですが、パンジーやビオラなども食べるので、
市街地でも多く見られます。
クロコノマチョウ (写真11)は暖地性のチョウで、
羽が地味な模様で暗いところを好みます。
夏型と秋型の2型で、秋型はより地味になります。幼虫の食草はジュズダマです。
以前は九州南部が北限でしたが、近年温暖化で北上し、
関東でも越冬しているようです。気温が低くても飛んでいるのを見ることがあります。
シロヘリクチブトカメムシ(写真12)は南方性のカメムシで肉食性です。
ヨトウムシなどの害虫の幼虫を吸汁するので益虫です。
最近は本州、四国にも分布を広げています。
このように温暖化で分布を拡大している生き物がいる一方で、気温の上昇で生息圏を奪われているものもいます。
温暖化の問題については今後一層の注意が必要です。







