石澤直也自然詩vol.44 (2016年01月26日更新)
くぬぎ山の自然 2016年2月号
冬鳥について
冬枯れの雑木林は虫たちは姿を消し、
寒々とした風景を醸し出しています。
こんな林で野鳥は冬鳥しか見られません。
初夏に渡ってきた渡り鳥は、秋には南の国へ帰って行って、
代わりに北国で夏を過ごしていた渡り鳥がやってきます。
写真1 ツグミ
写真2 冬枯れの雑木林
これらの渡り鳥の代表種はツグミです。
ジョウビタキはツグミ類に属し民家の庭にも良くやってきます。
マヒワ、カシラダカ、アオジ、シメなども冬鳥として雑木林で見られます。
写真3 ヤマガラ
写真4 コゲラ
写真5シメ
写真6 メジロ
留鳥のシジュウガラが代表種のカラ類も冬鳥で、
落葉した雑木林の中を群れを作って移動していきます。
シジュウガラを始め、ヤマガラや、エナガ類ではエナガ、
キツツキの仲間のコゲラも混じっています。
たまに黄緑色のきれいな留鳥のメジロも見られ、住宅街にも現れます。
冬は虫たちは活動を止めていて、
一部のフユシャクの蛾類を除いて見ることは殆どありません。
これらの冬鳥は何を食べているのか、インターネットで調べても、
餌台で餌をやるとか、やらない方が良いとか、
ピラカンサの実を食べていたとかは書いてありますが、
野外でどのように餌を採っているかは書かれていません。
そのような研究は国内ではやられていないようです。
シジュウガラやエナガなどはよく枝から枝へ渡って移動していきます。
その間枝や幹を突いたりします。
小生は、彼らが枝や幹に生み付けられた虫の卵を食べているのではと考えたのですが、
それにしては余りに小さくて余ほど沢山啄まないと腹一杯にはならないでしょう。
冬鳥が野外でどのように餌を採っているか、きちんと調べた人がいました。
アメリカのバーモント大学教授のベルンド・ハインリッチ博士です。
彼は真冬の林の中で野鳥がどのように過ごしているか、
キクイタダキ(英名kinglet)の体温生理から、
木で越冬している蛾類の幼虫まで組織的に調べていました。
零下30℃にもなる日、彼は森に入って太い木の幹で
カエデの幹を思いっきり叩いて木の実や虫の幼虫を
雪面に落として幼虫だけを集めたそうです。
その後はモミノキやトウカエデなど200本以上も試したそうで、
採集した幼虫の他にクモも含まれていたそうです。
幼虫(シャクガの仲間)が枝で越冬して、
それが野鳥のキクイタダキの餌になっていることは、
そのときまで報告されていなかったそうです。
幼虫の同定を専門家に依頼したのですが、
殆どは同定不可能だったとのこと。
飼育すれば可能だったのですが、
餌の植物が不明で、失敗したとのことです。
キクイタダキは体重が6グラム以下で、
小鳥の中でも最小の部類に属します。
体温は他の小鳥よりも3℃高く43-44℃だったとのこと。
人よりも7℃くらい高いわけで、
このような高い体温を維持できるのは体を覆っている羽毛が
外気温から身を守る絶縁体になっているとのこと。
バーモント州の冬の野外気温は-30℃にもなりますから、
体温と外気温との差は74℃にもなります。
体温維持のためには外気温を絶縁する羽毛の他に
体内の栄養源を燃焼させて造り出す代謝熱があり、
この場合カロリーの消耗が大きいわけで、
それを林の中の木々の枝についている蛾の幼虫が担っていることになります。
しかし、国内を振り返ってみると、
最近雑木林の中で見る蛾は少なくなっています。
狭山丘陵の奥、金堀沢ではゴールデンウィーク頃林道を歩くと、
道を覆っている木の枝から糸を引いて落ちてくる
多くの蛾の幼虫が見られたものです。
しかし、2000年頃からその数がぐんと減りました。
ある人は今では20年以上も前と比較すると
蛾は1/10以下になっているのではと言っていました。
蛾の幼虫が減ると、冬場の餌不足をきたします。
また、春の野鳥の繁殖期には雛の餌としてタンパク質が必要ですから、
蛾の幼虫は雛の餌として不可欠なものです。
その幼虫が減れば雛を育てられなくなるのですから、野鳥は減ります。
最近野鳥は確かに減っています。
雑穀類も食べるスズメですら数えるほどになっています。
雛には雑穀は与えることは出来ず、蛾の幼虫に頼らざるを得ず、
それが減っているのですから、スズメが減るのは当然です。
野外で冬を越している冬鳥も日本では本当に厳しい生存にさらされています。
なお、ここでハインリッチ教授の著書を紹介します。
New York Times Bestsellerで他にSummer Worldも著しています。
Bernd Heinrich, 2009. Winter World, 副題 The ingenuity of animal
survival, Harper Perennial.











